~モノクローナル抗体薬ってなに?~

みなさん、こんにちは!




「モノクローナル抗体薬」って聞いたことありますか?
もしかしたらどこかで耳にしたことがあるかもしれません。

モノクローナル抗体薬

 
 


 モノクローナル抗体薬は、病気や症状の原因になるもの(がん細胞やウイルス、痛みや痒みに関わる物質、など)にくっついて治療する、「特別なカギ」みたいな薬です。


 この「特別なカギ」は、ひとつのカギが、ひとつのドアにだけ合うように、特定のものだけ反応するので、ほかの体の部分にはあまり影響しません。


 体の中で自然にできる「抗体(こうたい)」というものをマネして、人工的につくられたお薬です。

 

〜抗体(こうたい)ってなに?〜

 
 抗体とは、ウイルスや細菌など「体にとってよくないもの(=異物)」を見つけて、くっついて攻撃する、体の“防衛チーム”の一員です。

 モノクローナル抗体薬は、その「抗体」だけを選んで大量につくった特別な薬です。
 

〜「モノクローナル」って?〜

 
 「モノクローナル」は(mono = ひとつ、clonal = クローン・同じもの)という、「1つの種類だけの」という意味です。

 つまり、病気に合わせて、正確な抗体を1種類選んで、同じ形・同じ働きのものだけをたくさん増やしてできた薬ということなんです。
 

〜どうやって効くの?〜

抗体薬 しくみ

 
たとえば…

<関節痛の場合>
痛みの原因物質をブロックして、「痛みの信号」が脳に届きにくくなり、痛みをやわらげます。

<アトピー性皮膚炎の場合>
かゆみの原因となる特定の物質だけを狙い撃ちにして、かゆみを抑えます。


<がんの場合>
がん細胞の表面にある特定の目印(たんぱく質)を狙って、がん細胞の働きを止めたり、壊したりします。
 
つまり、「狙い撃ちする薬」です。風邪薬みたいに体全体に効くのではなく、特定のターゲットだけを攻撃するのが特徴です。

 

〜どんな病気に使われてるの?〜

犬 抗体

 
現在、人医療や獣医療でも、様々な病気の治療に使われています
・がん
・リウマチ
・喘息(ぜんそく)
・アトピー性皮膚炎
・関節痛        など

 

<犬用モノクローナル抗体薬>

 
 

1. サイトポイント®(ロキベトマブ)

犬のアトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎に伴うかゆみを和らげるために開発された、新しいタイプの動物用医薬品です。注射によって投与され、1回の注射で約1ヶ月間効果が持続するのが特徴です。



 「ロキベトマブ」という「イヌ化抗イヌインターロイキン-31(IL-31)モノクローナル抗体」です。


 IL-31は、犬のアトピー性皮膚炎などで強いかゆみを引き起こす主要な「サイトカイン」と呼ばれる物質の一つです。サイトポイントは、このIL-31が、かゆみを引き起こす細胞の受容体(IL-31を受け取る場所)に結合するのを特異的にブロックします。
これにより、IL-31によるかゆみのシグナル伝達を抑制し、かゆみサイクルを断ち切ることで、アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎に伴うかゆみや症状を緩和します。

かゆみの原因となる特定の物質だけを狙い撃ちにして、かゆみを止める薬です。
 

サイトポイント

2. リブレラ®(ベジンベトマブ)

リブレラは、犬の関節痛(変形性関節症)をやわらげる注射薬で、1か月に1回の注射で長く効く、モノクローナル抗体薬です。



 犬の変形性関節症(OA)は関節の軟骨がすり減って痛みや動きにくさが出る病気で、中高齢のわんちゃんに多く認められます。


 痛みの原因物質「NGF(神経成長因子)」をブロックすることで、「痛みの信号」が脳に届きにくくなり、痛みがやわらぎます。


痛いよー!という電話がかかってくる前に、電話線(痛みの信号)を切るようなイメージです。

 

リブレラ

<猫用モノクローナル抗体薬>

 
 

1. ソレンシア®(フルネベトマブ)

ソレンシアは、ねこちゃんの関節痛(変形性関節症)をやわらげる注射薬で、月1回の注射で長く効くモノクローナル抗体薬です。



 ねこちゃんは「痛みを隠す」ので、見逃されがちですが、実はねこちゃんにも関節症は多く、高齢の子の多くがかかっていると言われます。

 わんちゃんのリブレラと同じで、痛みの原因物質「NGF(神経成長因子)」をブロックすることで、「痛みの信号」が脳に届きにくくなり、痛みがやわらぎます。


痛いよー!という電話がかかってくる前に、電話線(痛みの信号)を切るようなイメージです。

 

ソレンシア

2. 抗猫PD-1モノクローナル抗体(研究段階)

猫の難治性がんに対する免疫療法として研究が進められています。

 免疫チェックポイント分子PD-1を標的とし、リンパ球の機能を回復させることで、がん細胞への攻撃力を高めます。

 まだ実用化されていませんが、世界初の猫用PD-1抗体として、将来的ながん治療への応用が期待されています。 
 

ソレンシア

 これらのモノクローナル抗体薬は、従来の治療法では難しかった症状の緩和や疾患の治療に新たな選択肢となっています。

 特に高齢の動物たちにおいて、副作用を抑えつつ効果的な治療が可能となる点で、飼い主様や獣医師から高い評価を受けています。
 今後も、わんちゃんやねこちゃんの健康と福祉を向上させるための新しいモノクローナル抗体薬の開発が進められており、さらなる治療の幅が広がることが期待されています。