目が黒くなった???
~猫の角膜の病気~
今回はねこちゃんの角膜が黒く変化する病気についてお話しします。
突然ですが、この写真のような角膜の病気、ご存知ですか?

<黒色壊死症>
これは「黒色壊死症」という病気です。
黒色壊死症は、角膜分離症ともいわれ、猫の目の表面(角膜)が黒くなってしまう病気です。この黒い部分は、細胞が死んで変色したものです。
ペルシャ猫、ヒマラヤン、シャム猫といった特定の猫種でよく見られますが、どんな猫にも起こる可能性があります。最近では、スフィンクスでの黒色壊死症の罹患率が他の猫種に比べ高いことも報告されました。

はっきりした原因はまだ分かっていませんが、以下のことが関係していると考えられています。
・猫ヘルペスウイルス
多くの猫が感染するウイルスで、これがきっかけとなることがあります。
・慢性的な刺激
目の表面がいつも刺激を受けている状態で、引き起こされることがあります。
・まぶたの形や涙の問題
まぶたが内側に入り込む「眼瞼内反症」や、涙の量が少なかったり、質が悪かったりする場合です。
・目の治療
稀に、目の病気を治すための治療(ステロイドの目薬や手術)が、かえってこの病気を引き起こすこともあります。
最初は角膜に薄い茶色のシミのようなものができますが、だんだん濃い茶色や黒色に変わっていきます。大きさは小さいものから、角膜の半分を覆うほど大きくなることもあります。
多くの場合、痛みも伴うため、猫が目をしょぼしょぼさせたり、涙を流したりするようになります。症状が進行すると、角膜に穴が開いてしまうこともあります。

1日目
(初診時)

21日目

55日目

65日目

105日目

140日目

治療には主に「手術」と「内科的治療(薬など)」の2つの選択肢があります。
1. 手術による治療
根本的な解決を目指す場合、手術で黒い部分を切り取ります。
・全身麻酔下で、黒くなった部分の角膜を削り取ります。病変が深い場合は、結膜や角膜などを移植して目を覆う処置も行います。
・発症の原因が疑われる疾患があれば、それに対しても治療を行っていくことが重要です。例えば、まぶたの形など根本的な原因がある場合は、同時にその治療も行います。
・手術後も再発することがあります。そのため、術後も再発を予防するための保湿剤の目薬や感染を防ぐための目薬を使用する必要があります。
外科的治療後の長期予後や再発率の報告はまちまちですが、 様々な外科的治療後の経過を回顧した報告では、約20%で再発が認められたと報告されています。

自然に剥がれた直後の角膜の様子。
2. 内科的治療
手術が難しい場合や、症状が軽い場合は、薬を使って様子を見ることがあります。保湿効果のある目薬や、細菌感染を防ぐための抗生物質、抗ウイルス薬などの目薬などを使います。黒い部分が自然にポロッと取れて治ることがあります。しかし、自然に治るのを待つには数年かかることもあり、その間に症状が悪化して角膜に穴があく危険性もあります。
外科・内科療法ともに壊死病変が消失した後には目の不快感は改善します。しかし、いずれの方法にしても病変は再発することがあります。眼瞼内反症など背景にある疾患が取り除けるケースでは、再発リスクはある程度軽減できると考えられます。
どちらの治療法を選んだ場合でも、治療後も再発する可能性があるため、定期的なケアと獣医師との連携が大切です。
もし、飼っている猫の角膜に黒い変色が見られたり、目を気にしているような様子が見られたりしたら、早めに獣医師に相談しましょう。