~ウサギの不正咬合~
ウサギの歯に関連する病気は非常に多いです。
みなさんこんにちは!
ここ最近のペットとしてのうさぎさんの人気はすごく高まっていますね。うさぎ専門店やうさぎの専門誌なども増えています。診療を行っていても、うさぎの来院数は増えているように感じます。
うさぎが来院する理由で1番多いのは消化器症状です。それでは、2番目に多い病気って何かわかりますか?
…
実は「歯科疾患」、歯の病気やトラブルなんです。
今日はこの「うさぎの歯科疾患」、特に「不正咬合」について、少しお話しします。
まず、うさぎの歯の特徴についてお話しします。うさぎの歯は犬や猫、もちろん人とも全く異なり、すべての歯が一生伸び続けます。うさぎの歯は1ヶ月で約1㎝も伸びます。
「ん?伸び続けると食べられなくなるんじゃ…?」
正しい食生活や病気・怪我などがない限り、口をモグモグしていると、歯と歯がこすれて削れます。そのため、伸びた分削れるので常に正しい咬合(噛み合わせ)が維持でき、ちゃんと噛んでご飯を食べることが出来ます。
正常な頭蓋骨の模式図
しかし、様々な理由で「伸びる」と「削れる」のバランスが崩れると、歯が伸びすぎたり、伸びなかったり、ゆがんでしまったりすることにより、口の中を傷つけたり、痛みが生じたりしてしまします。これを「不正咬合」と言います。
・遺伝
・ごはん
・飼育環境
・事故や病気 など、様々です。
不正咬合の頭蓋骨の模式図
切歯(前歯)の不正咬合
臼歯(奥歯)の不正咬合
特にうさぎを飼育する上で大切なのはごはんです。先ほどもお伝えしたように、「よく噛む」ことにより正しい咬合が保たれます。しかし、ペレット中心のごはんやおやつのあげ過ぎなどにより牧草を食べる量が少ない場合や、ごはんのカルシウム不足、硬すぎたり大きすぎるごはんを食べてる場合などでは、不正咬合のリスクが高くなります。
たとえば、牧草をよく食べている子は、牧草をすりつぶすために奥歯をよく使って噛みます。つまり、よく歯が擦れるので削れやすくなります。しかし、柔らかいごはん(ペレットなど)が中心だと、噛む回数が少なくなるため、歯のトラブルが起きやすくなります。
それでは不正咬合が疑われるような症状はどのようなものでしょうか。
来院される理由として一番多いのは食欲不振です。口の中のトラブルなので、痛みや違和感などからごはんを食べられなくなります。「食べたそうにするけど、食べない」「匂いだけ嗅いでやめちゃう」「柔らかいものばかり選んでいる」というような印象を受ける方も多いです。
また、よだれが多いということで来院される場合もあります。口の周り、特に顎下が汚れていたり、脱毛していることもあります。また、前足が汚れている場合も注意が必要です。うさぎは前足で顔の周りをケアをするため、よだれが多いと前足、特に内側が汚れやすいです。口の周りが綺麗で、前足だけ汚れている場合もあります。
他には
・歯ぎしりをする
・口をモグモグさせる
・体重減少
・じっとしている
・鼻水がでる
・涙が多い
など、様々な症状が認められます。
よだれで脱毛した下顎
診断は直接口の中をチェックしたり、レントゲン検査などにより、確認します。前歯の歪みは比較的簡単に確認することができます。しかし、うさぎは人みたいに口を大きく、ぱかっと開けることできないため、お家で奥歯の確認するのは難しいです。先ほどの症状がある場合や、定期的な健康診断で先生に口の中を見てもらいましょう。偶然見つかることも多いですよ。
治療は、基本的には歯を削ります。口の中を物理的に傷つけている場合は、その部分を削って整えることにより治療します。状況により、注射や飲み薬などにより感染や痛みに対する治療を行います。しかし、うさぎの歯は伸び続けるために、繰り返すことがほとんどです。1回のみで再発しない子もいますが、数ヶ月や早い子だと数週間おきに削らなければいけない子もいます。一度歪むと、元に戻すのは困難であるため、できる限り予防することが大切です。
レントゲン検査
正常なウサギ(正面)
レントゲン検査
不正咬合(横向き)
正常な口腔内の模式図
臼歯の不正咬合の模式図
うさぎの不正咬合は遺伝的要素や不慮の事故や病気を除けば、ごはんや飼育環境を普段から気をつけると未然に防ぐことも可能な場合があります。正しい食生活や飼育環境を整えてあげましょう。