~まぶたの異常~
代表的なまぶたの異常についてお話します。
「うちの子のまぶた、なんだかおかしい?」
そのように思ったことはありませんか?
まぶたの異常は、見た目にもわかりやすく、ご家族にとっては心配ですよね。
今回は、代表的なまぶたの異常についてお話します。

犬のまぶたの模式図
~まぶたの炎症~
<眼瞼炎>
<霰粒腫>
マイボーム腺という脂を分泌する腺が詰まって起こります。まぶたにコロコロとしたしこりができますが、痛みはほとんどありません。
<麦粒腫>
いわゆる「ものもらい」です。
まぶたの縁にある腺(マイボーム線)に感染などにより炎症を起こして、膿が溜まった状態です。まぶたの一部が腫れて痛みを伴います。

化膿性肉芽腫性炎(犬)

霰粒腫と麦粒腫
ハムスターのまぶたです。左側のふくらみが霰粒腫、右側の少し赤いふくらみが麦粒腫です。

上まぶたをめくった写真
マイボーム腺に脂がつまっています。
炎症の原因によって治療法は異なります。細菌感染の場合は抗菌薬、アレルギーの場合は抗アレルギー薬を使用します。麦粒腫や霰粒腫は、自然に治ることもありますが、症状が続く場合は手術が必要になることもあります。
~まぶたの形の異常~
<眼瞼内反症>
まぶたが内側に巻き込まれ、まつ毛や被毛、皮膚によって目を刺激してしまう状態です。
<眼瞼外反症>
まぶたが外側にめくれ、目が乾燥してしまう状態です。目が充血したり、目やにが出たりします。
<まぶたの構造異常>
生まれつきまぶたの組織が欠損していたり、本来の場所とは異なるところに別の組織がある場合があります。場所や大きさなどによっては目が傷ついたりすることがあります。

眼瞼内反症(犬)

眼瞼内反症(犬)
まぶたが内側に入り込んで角膜に触れています。

一時的な処置後
一時的にまぶたを縫合することで、まぶたを外側にめくる処置です。

眼瞼内反症(猫)
この子はかなり重度で目に傷がついていました。

手術の様子
外側にめくれるように、まぶたを縫い縮めます。重度の場合はまぶたを切除することもあります。

手術2週間後の様子

手術の様子
下まぶたの皮膚のみを取り除いて縫合します。

術後2週間
アイラインが見えるようになりました。

まぶたの異常(犬)
この子はアイラインの一部が皮膚になっていて、被毛が角膜に接触しています。

まぶたの異常(犬)
そのため角膜に傷がつき続けています。

術後
毛が生えてしまっていた皮膚を切除し、まぶたの皮膚を一部取り除いた後。

手術直後

手術10日後

手術10日後
~その他の異常~
<新生物>
<裂傷>
まぶたに傷を負うことです。日常でよく診察するのは、事故や喧嘩による裂傷が多いです。
<寄生虫>
まぶた自体ではありませんが、まぶたの裏側に寄生虫が寄生することがあります。

瞼球癒着(犬)
まぶたと眼球がくっついています。

マイボーム上皮腫(犬)
この子はまぶたをめくると裏側に大きな腫瘤を認めました。

マイボーム上皮腫(犬)
顕微鏡を用いて切除した2週間後です。
傷口もほとんど目立たないですね。

マイボーム腺腫(犬)
まぶたのマイボーム腺に発生しています。

涙腺腺腫(犬)
まぶたの中に腫瘤ができることもあります。

涙腺腺腫(犬)
手術中の様子。

喧嘩による裂傷(犬)
この子は同居の犬に噛まれてしまいました。
まぶただけではなく眼球も破裂していました。

喧嘩による裂傷(犬)
夜間に救急で処置した後です。

喧嘩による裂傷(犬)
処置後2週間。

眼瞼裂傷(セキセイインコ)
もちろん小さな動物たちも怪我することはあります。
この子はケージ内の突起物でまぶたが切れてしまった子です。

東洋眼虫(犬)
まぶたの裏側に寄生する寄生虫もいます。
寄生虫により慢性的に刺激や障害を受けます。
今日紹介したのはごく一部です。動物の種類を問わず、ざまざまな病気や怪我が存在します。
大切な家族である動物たちの健康を守るために、日頃からよく観察し、異常があれば早めに獣医さんに相談することが大切です。