痛みを知る
緑内障の痛みは、
人間でいう「激しい偏頭痛」が
24時間365日続くようなものだと言われています。
しかし、言葉を話せない動物は
それを「元気がない」「寝てばかりいる」という
サインでしか出せません。
このような症状はありませんか?
以前より寝ている時間が増えた
散歩中に立ち止まる、または行きたがらない 顔の付近を触られるのを嫌がるようになった
食事への意欲が落ちている
常に目を細めている
以前より怒りっぽくなった、または臆病になった
【セルフ診断】
「痛み」度チェック
各項目を0〜3点で採点してみてくださいね。
<表情>
ぱっちり開いている:0
少し細める :1
常に細めている :2
強く閉じて開かない:3
<反応>
頭を撫でると喜ぶ :0
少し嫌がる :1
明らかに避ける :2
威嚇・攻撃的になる:3
<元気>
以前と変わらない :0
少し活動が減った :1
誘わないと動かない:2
ほぼ動かない :3
<合計スコア判定>
3点以下:【経過観察】
ただし定期的な眼圧測定は必須です。
4〜6点:【要注意】
慢性的な鈍痛を抱えている可能性が高いです。
7点以上:【緊急】
激しい痛みの中にいます。早めに病院に行くことを推奨します。
実は緑内障は「とても痛い」病気です
眼圧が30mmHgを超えると、
人間では救急車を呼ぶほどの頭痛です
言葉を持たない動物たちは、
この「終わりのない頭痛」に、
ただ静かに耐えることしかできません。
「最近寝てばかりいる」「元気がなくなった」のは、老化のせいではなく、痛みに疲れ切っているサインかもしれないのです。
しかし、この痛みは取り除くことができます。視覚を失った今、私たちが優先すべきは「この激痛を消し去り、本来の穏やかな日常を返してあげること」です。
そのために、当院では以下の治療法を提案しています。
痛みを消すための
具体的な選択肢
〜手術〜
両目との義眼の子
強膜内義眼挿入術
Intrascleral Prosthesis(ISP)
この手術は、眼球の内容物(虹彩、毛様体、脈絡膜、網膜、水晶体など)をすべて摘出し、空になった強膜(白目の部分)の中にシリコン製のボール(インプラント)を挿入して縫い合わせる手法です。
目的:慢性緑内障による高眼圧が生じさせる「激しい痛み」の消失と、眼球摘出を避けることによる「外観の維持」です。
適応:視覚を完全に失っており、内科的治療(目薬など)では眼圧管理が困難な症例に行われます。
メリット:まぶたを閉じる必要がなく、見た目が通常の眼球に近い状態で残せます。
そのため、自然な表情が保たれやすいです。
デメリット:角膜が著しく損傷している場合は適応外になります。また、角膜や強膜、結膜、まぶたなどの組織は残るため、今後もケアが必要です。
右目摘出
眼球摘出
Enucleation
この手術は、眼球本体(角膜、強膜、内部組織すべて)を周囲の付随組織(筋肉、視神経の一部、瞬膜、眼瞼縁など)と共に摘出し、眼窩(目の収まっている穴)を閉鎖する術式です。
目的:緑内障による慢性的で激しい痛みの根本的な消失、および二次的な角膜疾患や感染症のリスクを排除することです。
適応:視覚を完全に失っており、眼球の損傷が著しい症例などに行われます。
メリット:インプラントを入れないため、角膜潰瘍といった合併症の心配がほとんどなく、管理が非常に簡便になるのが大きなメリットです。
デメリット:皮膚や筋肉、神経などを切除するため、眼科手術の中でも侵襲(体へのダメージ)が大きい手術になります。手術後は上下のまぶたを縫い合わせるため、目が閉じた状態(眠っているような姿)になり、外見の変化が大きいです。そのため、ご家族が「失う」という感覚を強く持ちやすいです。
長期的に高眼圧が続いて眼球拡大した症例
そのほかの方法
点眼や内服薬による内科管理 毛様体光凝固術(レーザー治療)
内科管理やレーザー治療は「痛みのない時間を引き延ばすための猶予期間」を作る治療であり、慢性緑内障という進行性疾患においては、「いつかこれらの方法では痛みを抑えきれなくなる日が来る」ことを前提としたライフプランを立てることが重要です。
1. 内科管理(点眼薬)の長期的な課題 内科管理は、眼圧を下げる点眼薬を組み合わせて維持する最も一般的な方法です。
しかし、初期には効果的であっても、時間の経過とともに薬に対する反応が徐々に低下します。
緑内障の点眼薬(プロスタグランジン関連薬や炭酸脱水酵素阻害薬など)は比較的高価です。生涯にわたって複数種類の点眼を毎日継続する必要があるため、数年単位の長期スパンで見ると、外科手術を一度行うよりも合計コストが大幅に上回ることが少なくありません。
2. 毛様体光凝固術(レーザー治療)の特性と限界
房水を産生する「毛様体」をレーザーで破壊し、産生量そのものを減らす治療法です。眼球を切り開く必要がなく、全身への負担も比較的少ないため、高齢犬や初期症例には非常に優れた選択肢となります。
しかし、この治療は「完治」させるものではありません。生き残った毛様体組織が機能を回復したり、残存する排出路の悪化が進んだりすることで、いつか必ず眼圧が再上昇し、コントロール不能になる時期が訪れます。効果を維持するために複数回の照射が必要になることも多く、最終的には眼球摘出術や義眼挿入術といった根治的な外科手術が必要になるケースが大半です。
よくあるご質問
Q&A
Q1. 目が見えていないのに、なぜ治療が必要なのですか?
A. 緑内障の本当の恐ろしさは「失明」ではなく「継続する激痛」にあります。眼圧が高い状態は、人間でいう「重度の偏頭痛」が24時間続くようなものです。動物は痛みを隠すのが得意ですが、実際には深い不快感の中にいます。治療の目的は、視覚を戻すことではなく、その「痛み」から解放してあげることにあります。
Q2. 眼球摘出を勧められましたが、見た目が変わるのがかわいそうです。
A. 飼い主様にとって最も辛い選択ですよね。当院では見た目を維持するための「義眼の挿入」など、状態に合わせた複数の選択肢を提案しています。どの方法がその子とご家族にとって最善か、一緒にじっくり話し合って決めていきましょう。
Q3. うちの子はシニア犬ですが、手術の麻酔に耐えられるでしょうか?
A. 高齢だからこそ、痛みによるストレスは心臓や体に大きな負担をかけます。当院では事前の詳細な血液検査や循環器チェックを徹底し、臨床経験に基づいたオーダーメイドの麻酔管理を行っています。手術をしない場合のリスクと、麻酔のリスクを天秤にかけ、エビデンスに基づいた判断をサポートします。
Q4. 痛みが取れたかどうか、言葉を話さない犬で分かりますか?
A. はい、多くの飼い主様が「術後、以前のように尻尾を振るようになった」「食欲が戻り、顔つきが明るくなった」と驚かれます。これまで「老化で寝てばかりいる」と思っていた姿が、実は痛みによるものだったと気づかれるケースは非常に多いです。元気を取り戻した姿こそが、痛みが消えた何よりの証拠です。
Q5. 義眼の手術(シリコンインプラント挿入術)は難しい手術ですか?
A. 手術の難易度は「やや高い」と言えますが、手順がしっかりと確立された安全な手術です。単純に眼球を取り除く「摘出術」と比較すると、眼球の形をきれいに残すための繊細な工程が必要になるため、より専門的な技術と丁寧な処置が求められます。しかし、眼科手術に精通した獣医師であれば、リスクを十分にコントロールしながら行える手術ですので、どうぞご安心ください。
もう一度、
穏やかな時間を
共に過ごすために。
緑内障の痛みは、動物にとって孤独な戦いです。
しかし、ご家族が気づき、
手を差し伸べることで、
その痛みは必ず取り除けます。 「手術は怖い」
「もう遅すぎるかもしれない」
そう思われる前に、
まずは一度、お話を聞かせてください。
経験に基づき、医学的な正解だけでなく、
あなたのご家族にとっての最善を一緒に考えます。
まずはお電話にて「緑内障のことで相談したい」とお伝えください。